精神症状や問題行動が生じる脳のメカニズムとして、精神症状や問題行動と自律神経が密接にかかわっていることがわかってきました。
自律神経は、身体全身に張り巡らされており、心身の安定に大きく関わっています。
精神症状や問題行動を呈しているときには、自律神経(交感神経や副交感神経)が過剰に働いています。
交感神経が過剰に働き続けることで、過活動になり、落ち着かなくなったり、入眠困難や中途覚醒といった不眠症状、暴言や暴力のもとになるイライラ感や攻撃性が高まりやすい状態になります。
一方、副交感神経(背側迷走神経)が過剰に働き続けることで、やる気がおきない、何も考えられないといったうつ状態や、感情が麻痺する、記憶の一部が抜け落ちるといった解離状態になったりします。
いずれの場合も、自分の意志でコントロールできる範疇を超えた大変苦しい状態になります。
自律神経が過剰に働く要因として、自律神経の司令塔である脳の扁桃体という部分が関係しています。
扁桃体は、危険を察知した時に、身を守るように自律神経に指令を出します。
例えば、道を歩いていて自転車とぶつかりそうになったとき、咄嗟に身体が自転車を避けます。私たちの意思が関与する前に、自然にとる行動です。
これは、危険(自転車)を避けるように扁桃体が指令を出して、(この場合は)交感神経が活発に活動し、身体が瞬発的に反応できた結果です。
自転車が過ぎ去ると、私たちは再び道を歩きはじめ、心臓の拍動や恐怖心などは徐々に収っていきます。
このように、本来、扁桃体は、危険を回避する大切な役割を担ってくれています。
しかし、扁桃体が、過剰に危険だと認識したり、危険が続いていると認識したときに、症状に繋がるような事態になっていきます。
自転車が過ぎ去ったにもかかわらず、自転車とぶつかりそうになると認識し続けている状態のことです。
事故や事件などの突発的で危険な出来事に遭遇した時や、虐待やDV、いじめ、ハラスメントなどの日常的に危険な出来事にさらされた時、扁桃体が過剰に反応して、危険が去ったものと認識できなくなり、交感神経や副交感神経が高ぶったままになります。
それが、冒頭で書いたような症状や、生きづらくなる行動に繋がっていきます。
トラウマ(危険な出来事によって負った心の傷)が引き起こす症状としてPTSDが一般的ですが、うつ病やパーソナリティ症、依存症、解離症など、PTSD以外の精神疾患においても、トラウマが影響していると言われています。
症状の現れ方(自律神経の過剰調整がどこに出るか)によって、診断名が違ってくるともいえます。
診断名がつかない場合でも、原因不明の不調や生きづらさなど、困っている症状はトラウマの影響を受けている可能性があります。
カウンセリングオフィスtsumugiでは、
危険は過去のもの(過ぎ去ったもの)と扁桃体が認識して自律神経が正常に機能するよう、専門的な技法を使ってトラウマにアプローチし、精神症状や生きづらさからの回復を目指します。